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昨年の感動を再び — Product Experience Summit Tokyo 2024 人気セッション振り返り

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Product Experience Summit Tokyo 2025

株式会社Contentservの年次イベントとしてスタートし、日本唯一のPIMカンファレンスとして発展してきた Product Experience Summit Tokyo。現在はCentric Softwareの一員として進化を遂げ、2025年からはCentric PXMソリューションの公式イベントとして開催されます。

本記事では、「Reviving the JAPAN Brand ~コンテンツファーストCXで甦るJAPANブランド~」をテーマに、2024年10月に開催された第6回「Product Experience Summit Tokyo 2024」を振り返り、特に顧客企業による実践的な事例セッションを2つご紹介します。昨年の熱気を再び感じながら、今年11月に予定されている Product Experience Summit Tokyo 2025への期待を高めていただければ幸いです。

人気セッション1:PIMは“情報のサプライチェーンDX” — ミズノ株式会社 芹澤剛 氏

ミズノはグローバルに展開するスポーツブランドとして、商品開発から販売までの一貫したブランド体験の提供を目指してきました。しかし、各国・地域の要件に応じて商品情報を整備・更新するプロセスは膨大な工数がかかり、しばしば誤情報や更新遅延を招いていました。その結果、

  • 顧客体験の一貫性が損なわれる
  • 各リージョンで返品対応が発生する
  • 本来注力すべきマーケティング施策に十分なリソースを割けない
    といった課題が顕在化していました。

これらの課題解決に向けて導入されたのが Contentserv(現 Centric PXM™)のPIM/DAM です。同社 グローバルデジタルDTC統括本部 グローバルデジタルDTC統括担当の芹澤 剛氏は、導入を「単なるシステム刷新」ではなく、製品情報のサプライチェーンを再設計するDX と定義しました。

取り組みのポイントは次の3つ:

  1. 商品情報の一元化(Single Source of Truth):各地域でバラバラに管理されていた商品情報を集約、商品ページ作成の効率化・誤情報の防止を実現
  2. グローバルDTC戦略の加速:自社EC「CLUB MIZUNO」の会員数増加と購買体験の改善をKPIに設定、商品データの精度向上により、EC売上比率アップを実現
  3. AI活用を見据えた基盤づくり:PIMで整備されたマスターデータとトランザクションデータを蓄積、将来的にAIを活用した商品レコメンドや顧客体験強化を可能にする「裏テーマ」

さらに芹澤氏は、プロジェクト推進における「組織文化変革」の重要性にも触れました。

「PIMプロジェクトはシステムの話ではなく、部門間の業務プロセスを横断的に再設計する取り組み。時には摩擦も生じるが、それこそがDXに必要なプロセスだ」

PIMの導入によって、商品情報の更新にかかっていた膨大な手間とリードタイムは大幅に削減されました。誤った情報で商品を発売してしまうリスクも低減し、返品対応に追われることも少なくなった結果、現場のリソースは本来注力すべきマーケティングや新しい施策に振り向けられるようになりました。

さらに、グローバルで統一された情報基盤を整えたことで、消費者に届けるブランド体験そのものが磨かれ、会員組織「CLUB MIZUNO」の成長やEC売上比率の向上といった具体的な成果に結びついています。単なる効率化にとどまらず、「商品情報を起点に顧客との関係性をどう深めるか」という次のステージに進むための土台が築かれたのです。

芹澤氏はこの取り組みを「未来のAI活用につながる布石」と位置づけています。PIMによって整備されたマスターデータとトランザクションデータは、将来的にAIが顧客ごとに最適化された体験を生み出すための重要な学習素材となります。つまり、今回のPIM導入は単なるシステム更新ではなく、ブランドがこれからも選ばれ続けるための戦略的な投資であり、DXを通じて「情報のサプライチェーン」を強化する大きな一歩となったのです。

人気セッション2:「情報の管理から体験価値の提供へ」ドームとDNPが示す未来のPX戦略

Under Armourの日本総代理店であるドームは、国内市場にブランドの魅力を正しく伝えることを使命としていました。ところが、商品画像や説明文がシステムごとに散在していたため、情報収集や更新作業に膨大な時間と人手がかかり、誤情報が流通するリスクも抱えていました。結果として、商品ローンチの遅延やキャンペーンの実行スピード低下など、顧客に一貫したブランド体験を届けるうえで大きな障害となっていたのです。

こうした状況を打開するために導入されたのが Contentserv(現 Centric PXM)です。ドームは、商品情報を「唯一の正解(SSOT: Single Source of Truth)」として一元管理できる基盤を構築し、以下のような重点施策を進めました。

  1. データの一元化と業務フローの再設計:分散していた画像や説明文をCentric PXMに集約。商品情報の更新作業を標準化し、工数削減と精度向上を実現。
  2. グローバルと国内要件を両立したデータモデル構築:本社が持つグローバルデータモデルと、日本市場固有の情報要件を統合。柔軟なデータ設計により、地域特性を反映しつつグローバル基準を維持。
  3. 事務局体制の整備と定着化:専任チームを設置し、全社で統制のとれた商品情報運用を実現。各部門が同じ基盤を使うことで、情報の整合性とスピードが飛躍的に向上。

プロジェクト成功の大きな要因となったのが、パートナーである 大日本印刷(DNP) の伴走支援です。DNPはシステム構築だけでなく、業務プロセスの再設計(BPR)や運用設計まで包括的にサポート。さらに、印刷やカタログ制作で培ったノウハウを応用し、商品情報の管理と活用を強力に後押ししました。

ドームの神野氏は、PIM構築において「利用者視点のモデリング」や「パフォーマンスを重視したアーキテクチャ設計」に注力し、SaaSシステムの利点を最大限活用していると述べました。

この取り組みによって、商品情報を正しく、かつ迅速に市場へ届ける仕組みが整備され、ブランド体験の一貫性が大幅に向上しました。加えて、マーケティング施策の実行スピードが加速し、現場の負担軽減と顧客満足度の両立を実現しています。

さらにドームとDNPは、今回構築した基盤を出発点に、生成AIを活用したパーソナライズマーケティングへの応用を視野に入れています。単なる情報管理を超え、顧客一人ひとりに最適化された体験を提供する「PXMの未来像」を描き出したことが、本セッションの最大のハイライトとなりました。

昨年の盛り上がりと、次回への期待

Product Experience Summit Tokyo 2024には、製造業・小売業・B2Bサービスを中心に約150名が参加し、会場は終始熱気に包まれました。参加者からは「他社のリアルなDX事例を聞けたことが刺激になった」、「具体的なデータモデルや運用について知りたい」、「リテールでのPIM活用を深掘りしたい」などの声が寄せられ、90%以上がイベントに満足と回答。70%以上が商品情報管理の課題として「データの分散化」を挙げ、PIM/DAMの必要性が改めて認識されました。 

この熱気を引き継ぎ、Product Experience Summit Tokyo 2025 はさらに進化したテーマと豪華登壇者でお届けします。情報のサプライチェーンDX、生成AIによるパーソナライゼーション、そしてPIM・PLMの連携によるエンドツーエンドの体験設計など、いま最も注目されるテーマを取り上げます。