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PIMとMDMの違いとは?企業の競争力を高めるデータ戦略

​​デジタルコマースの拡大により、企業は多様な販売チャネルで一貫した商品情報を提供することが求められています。しかし、販売チャネルの増加にシステムやプロセスが追いつかず、データ更新や管理が複雑化。結果として、業務効率の低下やコストの増大を招いています。

世界最大規模のICT(情報通信技術)リサーチ&アドバイザリ企業であるGartner(ガートナー)の報告によると、データ品質の低さが原因で、企業は年間平均1,290万ドルもの損失を被っているといいます。(出典:Data Quality: Best Practices for Accurate Insights)それほどまでに正確なデータを保つことは、今や企業の競争力を左右する重要な課題となっています。

この課題を解決するには、分散した商品データを一元管理し、正確かつ最新の情報を全チャネルへスムーズに配信できる仕組みが必要です。その鍵となるのが、PIM(商品情報管理)システムとMDM(マスターデータ管理)システムです。それぞれが異なる役割を担いながら連携することで、データの整合性を高め、業務効率を向上。さらに、データ品質の向上によるコスト削減と顧客体験の最適化を実現します。

PIMとは?

PIM(商品情報管理)は、商品に関するあらゆるデータを収集・整理し、複数の販売チャネルへ効率的に配信するためのシステムです。従来は、商品仕様や属性、マーケティングコンテンツなどの情報を一元管理することが主な役割でした。しかし近年では、コンプライアンス対応やサステナビリティ、サプライチェーンの透明性などへの要求が高まる中で、PIM(商品情報管理)は単なるデータ管理ツールから、データの検証・拡充・最適化を担うインテリジェントなソリューションへと進化しています。

MDMとは?

MDM(マスターデータ管理)は、企業内のあらゆる部門の業務に必要なマスターデータを一元管理し、正確かつ最新の情報を維持するためのシステムです。対象となるデータには、顧客情報、取引先情報、商品識別情報、財務データなどが含まれます。この仕組みにより、データの重複や不整合を防ぎ、企業全体で同じ情報を共有できるSSOT(信頼できる唯一の情報源)を実現します。MDM(マスターデータ管理)は、部門間の連携を強化し、企業全体のデータ管理体制を支える戦略的な基盤システムとして機能します。

PIMとMDMの項目別で見る違い

PIM(商品情報管理)が商品情報の「活用」に焦点を当てるのに対し、MDM(マスターデータ管理)は「データの土台」を整える役割を担います。以下では、それぞれの特徴と違いを項目ごとに見ていきます。

目的

PIM(商品情報管理)は、顧客に向けて提供する商品情報を整理・拡充・配信することで、販売チャネル全体で一貫した情報提供を実現します。これにより、ブランドイメージの統一や、各販売チャネルでの商品情報の一貫性を保てます。
MDM(マスターデータ管理)は、企業全体で使用されるマスターデータを統合・標準化し、正確で整合性のあるデータ基盤を構築します。経営判断や業務効率化に必要なSSOT(信頼できる唯一の情報源)を提供することが目的です。

対象データ

PIM(商品情報管理)が扱うのは、商品仕様や属性情報、サイズ・カラーなどのバリエーション情報、画像や動画などのデジタルアセット、商品説明文、マーケティング情報、販売チャネルごとの商品データなどです。消費者や販売パートナーに向けて「見せる情報」「伝える情報」を中心に管理します。
MDM(マスターデータ管理)は、顧客、取引先、商品識別コード、仕入先、財務、人事情報など、企業活動全体に関わるマスターデータを対象とします。PIM(商品情報管理)が商品軸でのデータ管理に特化しているのに対し、MDM(マスターデータ管理)は企業全体のデータを統合する広範な仕組みです。

機能

PIM(商品情報管理)は、商品データの一元管理、販売チャネルや地域ごとの情報最適化、翻訳・ローカライズ対応、マーケティング素材の配信管理などを行います。また、ECサイトやカタログ、自社システムなど、複数の販売チャネルへのデータ連携を自動化することで、常に最新で正確な商品情報を提供できます。
MDM(マスターデータ管理)は、重複データの排除やコード体系の統一、データ品質の向上、アクセス権限の管理、データ管理体制の強化などを行います。複数部門・複数システム間で共通して使われるデータの整合性を保ち、企業全体での信頼性を高めます。

導入効果

PIM(商品情報管理)を導入することで、新商品の市場投入までの時間を短縮し、オムニチャネル販売を効率的に推進できます。正確で魅力的な商品情報をタイムリーに発信することで、顧客体験の向上やブランド価値の強化にもつながります。
MDM(マスターデータ管理)を導入することで、データの整合性と信頼性が高まり、部門をまたいだ迅速な意思決定が可能になります。さらに、全社的なデータの標準化により、業務プロセスの効率化やリスクの低減にも貢献します。

データ統合における役割

PIM(商品情報管理)は、販売チャネルごとに必要な商品情報を整理・統合し、正確で一貫性のあるデータを提供する役割を担います。これにより、ECサイトやカタログなど、顧客接点で常に最新かつ信頼できる商品情報を発信できるようになります。
MDM(マスターデータ管理)は、商品データだけでなく、取引先・顧客・財務など、企業全体のマスターデータを統合・標準化します。全社共通の「信頼できる唯一の情報源(SSOT)」を構築することで、データの重複や不整合を防ぎ、正確な情報に基づく意思決定を支援します。を支える基盤となります。

項目 PLM MDM
目的 製品の企画、設計、製造、販売、廃棄までのライフサイクル全体を一元管理する 企業内のデータを統合・標準化し、一元管理する
対象データ 製品仕様、設計図、BOM、プロジェクト管理、変更履歴などのデータ 顧客、製品、サプライヤー、従業員などのマスターデータ
主な機能 製品開発プロセスの最適化、設計変更管理、コラボレーション支援 重複データの排除、品質向上、データガバナンスの強化
使用部門 R&D部門、製造部門、品質管理部門、マーケティング部門 IT部門、データ管理部門、経営企画部門
導入効果 製品開発の効率化、タイム・トゥ・マーケットの短縮、製品品質向上 データの整合性確保、迅速な意思決定支援、業務プロセスの標準化
統合の役割 製品ライフサイクルの各フェーズをシームレスに連携 企業内外のデータを統合し、信頼性の高い単一のデータ基盤を提供

PIMとMDMの共通のメリット

  • 市場投入までの時間を短縮
    一元管理された高品質な商品データを活用することで、商品を迅速に市場投入できます。
  • 販売チャネルごとの要件に合わせた情報提供
    各販売チャネルの要件に適合した、正確な商品情報を提供することで、小売業者からの承認率を向上させます。
  • コンプライアンス対応
    管理体制と監査証跡の仕組みにより、全社的なコンプライアンス対応を推進します。
  • 業務効率を大幅に改善
    スプレッドシートやメールでの手作業を自動化されたワークフローに置き換え、作業時間とヒューマンエラーを削減します。
  • SSOT(信頼できる唯一の情報源)を確立
    すべてのシステムが同じ正確な商品データを参照できるようにし、情報の整合性を維持します。
  • リアルタイムで最新情報を共有
    価格・在庫・販売状況を即時に更新し、どの販売チャネルでも常に最新情報を反映します。
  • 全社的なデータ管理体制の強化
    手動入力ミスを防ぎ、システム間のデータ統制を徹底することで、データ品質と透明性を向上させます。

PIMとMDMのどちらを使うべきか

PIM(商品情報管理)とMDM(マスターデータ管理)は、どちらも企業の情報基盤を支える重要な仕組みです。以下では、それぞれを優先すべきケースと、両方を導入すべきケースを紹介します。

PIMを優先すべきケース

  • ECサイト、マーケティング、営業など、複数の販売チャネルで商品情報を一元管理したい場合
  • 多地域・多販売チャネルにまたがる大規模な商品カタログを運用している場合
  • 商品データの不整合により、発売の遅れや手動修正が頻発している場合
  • グローバル展開に伴い、多言語対応やローカライズが求められる場合

MDMを優先すべきケース

  • 組織全体の管理体制と整合性の確立が戦略的な優先事項である場合
  • 商品・顧客・サプライヤーなどのマスターデータが分断されている場合
  • 正確なレポート、法令遵守、全社的な可視化を重視して意思決定を行いたい場合
  • システム統合やデジタルトランスフォーメーションを進めるために、標準化されたデータ基盤が必要な場合

PIMとMDMの両方を導入すべきケース

  • 管理体制と充実した商品コンテンツを同時に実現し、ビジネス価値を高めたい場合
  • オムニチャネル戦略をグローバル規模で展開する必要がある場合
  • すべての販売チャネルで一貫性のある、最適化された商品体験を提供したい場合

PIM(商品情報管理)とMDM(マスターデータ管理)を組み合わせることで、両者の強みを活かしたPXM(Product Experience Management:商品体験管理)の基盤を構築できます。
PXMは、データの正確性を保ちながら、どのチャネルでも一貫性があり、文脈に沿った魅力的な顧客体験を提供するための次世代の仕組みです。

PIMかMDMのどちらかに依存するリスク

PIM(商品情報管理)とMDM(マスターデータ管理)は、それぞれ異なる目的を持ち、異なる課題を解決する仕組みです。しかし、どちらか一方に依存すると重大なデータギャップが生じ、企業に大きな損失をもたらす可能性があります。

市場調査会社Forrester(フォレスター)の報告によると、4社に1社以上がデータ品質の問題によって年間500万ドル以上の損失を報告しており、中には2,500万ドルを超えるケースも確認されています。特に規制の厳しい業界では、わずかなエラーがコンプライアンス違反につながるリスクもあります。(出典:Millions Lost In 2023 Due To Poor Data Quality, Potential For Billions To Be Lost With AI Without Intervention

食品業界を例にすると、PIM(商品情報管理)は栄養成分、アレルゲン情報、パッケージ画像、マーケティング表現など、消費者向けの商品情報の管理に強みを持っています。これにより、小売業者やECサイトへ正確でローカライズされた商品情報を迅速に提供することが可能です。しかし、PIM(商品情報管理)単体ではサプライヤーデータや財務記録といった上流データの管理ができません。そのため、原材料の変更や新しい仕入先の追加時に、法令遵守の抜け漏れが発生するリスクがあります。

一方でMDM(マスターデータ管理)は、サプライヤー情報、商品識別子、財務データなどを統合し、SSOT(信頼できる唯一の情報源)を構築します。これにより、サプライチェーン、財務、コンプライアンス部門間の整合性を保つことができます。ただし、MDM(マスターデータ管理)単体では顧客向けの商品情報を魅力的に発信する機能がないため、店頭やECサイトでの商品情報更新や整合性チェックが手作業になりやすいという課題があります。

このようなリスクは業界を問わず発生します。たとえば家電業界では、仕様の誤りや記載漏れが高額な返品やクレームの原因となることがあります。また、化粧品業界では成分情報の欠落や規制対応の遅れが市場参入の妨げとなるケースも見られます。

PIMとMDMを統合するベストプラクティス

PIM(商品情報管理)とMDM(マスターデータ管理)を統合することで、全社的なデータ管理体制と販売チャネル向けの商品コンテンツ管理を両立できます。以下のベストプラクティスを実践することで、より効率的で正確なデータ運用を実現できます。

  • 役割を明確に分担する
    PIM(商品情報管理)は商品データを商取引や顧客体験向けに最適化し、MDM(マスターデータ管理)は企業全体のデータ管理体制を担います。両者の役割を明確にすることで、重複や混乱を防ぎます。
  • 必要なデータだけを同期する
    MDM(マスターデータ管理)からPIM(商品情報管理)へは、商品名・仕様・寸法などの顧客向けに必要な情報だけを連携させます。不要なデータを排除することで、処理効率と精度を高めます。
  • エッジで情報を充実させる
    PIM(商品情報管理)を使って、MDM(マスターデータ管理)で管理された基本データを翻訳・ローカライズ・補足し、顧客向けの最終形に整えます。
  • フィードバックループを閉じる
    PIM(商品情報管理)で強化されたデータをMDM(マスターデータ管理)へ戻すことで、分析精度や一貫性を高め、継続的な改善サイクルを確立します。
  • 管理体制の流れを自動化する
    APIを活用して、データの検証、バージョン管理、公開プロセスを自動化し、ミスや手動作業を削減します。
  • 「階層」ではなく「エコシステム」として考える
    両システムを信頼できる共通基盤として連携させ、コマース、コンプライアンス、経営戦略を支えるデータエコシステムを構築します。

Centric PXMで実現する管理体制から成長への転換

PIM(商品情報管理)やMDM(マスターデータ管理)は、企業データを構造化し統制するための基盤です。しかし今求められているのは、正しいデータを持つことだけではありません。そのデータを市場で活用し、魅力的でコンプライアンスに準拠した商品体験へと変換することです。

Centric PXMは、PIM、MDM、DAM(デジタルアセット管理)をはじめ、商品コンテンツシンジケーションやDSA(デジタルシェルフ分析)を1つのプラットフォームに統合。AIを活用した属性の自動マッピング、柔軟なデータ階層管理、組み込みのコンプライアンスチェックなどの機能により、商品情報を正確で監査対応が容易な状態に保ちつつ、販売チャネルごとに最適化された形で提供します。

Centric PXMがもたらす価値

  • 商品コンテンツの作成・強化・検証・配信を自動化
  • 1,000以上の販売チャネルで統一された信頼性の高い情報を配信
  • マスターデータを一貫性のある魅力的な商品体験に変換

導入効果の実績

  • Aetrex:売上を250%増加
  • Ravensburger:商品リスト作成時間を98%削減
  • Electrolux:商品コンテンツ作成の工数を20%削減

これが、企業データ管理と市場展開をシームレスにつなぐ「データエコシステム」です。コンプライアンスを維持しながら迅速な商品投入と一貫した顧客体験を実現します。

データを管理するだけの時代から、成長のために活かす時代へ。Centric PXMがデータ戦略を次のステージへ導きます。