PIMとPLMの違いとは?知っておくべきデータ管理の本質
PIM(商品情報管理)とPLM(製品ライフサイクル管理)は、どちらも企業の業務効率や収益性を大きく高めるシステムです。
しかし、どちらのシステムが自社に合うのか、迷う企業も多いでしょう。
市場調査会社Grand View Research(グランドビューリサーチ)によると、これら2つの市場は今後も急成長が見込まれており、2030年までにPIM(商品情報管理)市場は約320億米ドル、PLM(製品ライフサイクル管理)市場は約540億米ドルに達すると予測されています。(出典:(出典:Product Information Management Market)
140年以上の歴史を持つおもちゃメーカー、Ravensburger AG(ラベンスバーガー社) は、世界的に展開する老舗ブランドです。かつて同社では、年間約3,000SKUの商品情報を手作業で管理しており、30カ国以上・40言語に対応する必要があったため、一つの商品情報を更新するだけでも3〜4時間要することがありました。
しかし、2019年にPIM(商品情報管理)システムを導入したことで、商品情報の更新にかかる時間を約98%削減することに成功しました。現在では、一つの商品あたりわずか3〜5分程度で更新が完了しています。
この取り組みにより、データ管理コストを大幅に削減し、業務効率が飛躍的に向上しました。
サステナブルなファッションブランドEILEEN FISHER(アイリーン・フィッシャー) は、1984年にわずか4点のコレクションからスタートしました。現在では、850人以上の従業員を抱え、50の直営店と400以上の百貨店で展開するB Corp認証企業へと成長し、オムニチャネル戦略を推進しています。しかし、ブランドの拡大に伴い、服のデザインや販売、更新プロセスが複雑化。手作業によるエラーや遅延、非効率なワークフローが大きな課題となっていました。
そこでEILEEN FISHER(アイリーン・フィッシャー)は、最新のPLM(製品ライフサイクル管理)システムを導入。その結果、商品企画にかかる時間を30%短縮し、ラインシート作成にかかる時間を50%短縮するなど、業務効率の大幅な改善を実現しました。
ブランドの成長や市場拡大に伴い、商品情報の管理や開発プロセスの効率化は、どの企業にとっても重要な課題となっています。
この記事では、こうした課題を解決する鍵となるPIM(商品情報管理)とPLM(製品ライフサイクル管理)の違いを整理し、それぞれがどのような企業に適しているのかをわかりやすく紹介します。
PIMとは?
PIM(商品情報管理)は、複数の販売チャネルやマーケティングチャネルで商品を正確かつ一貫して販売するための情報を一元管理するシステムです。
商品名や説明文、仕様、画像、動画、翻訳情報など、あらゆる商品情報を一つの場所で管理する「SSOT(信頼できる唯一の情報源)」として機能します。
これにより、自社ウェブサイトからAmazonなどの外部ショッピングサイトに至るまで、商品情報の更新が即座に反映され、どの販売チャネルでも常に最新で統一された情報を提供できます。
さらに、Ravensburger AG(ラベンスバーガー社)のように30カ国以上で事業を展開するグローバル企業でも、PIMを活用することで、各国・各言語に応じた商品情報を効率的かつ一貫して配信することが可能になります。
PIMは、マーケティング、営業、EC、商品管理など、商品情報の正確性と最新性を重視する部門で幅広く活用されます。複数の部門が一元化された情報を共有することで、作業の重複やデータの不整合を防ぎ、データ管理の煩雑さを解消します。
2024年時点で、世界で8万5,000社以上の企業がPIMを導入し、9億件を超えるSKUを管理していると報告されています。(出典:Market Reports World)
PLMとは?
PLM(製品ライフサイクル管理)は、商品の企画、設計、製造、販売、廃棄に至るまで、製品ライフサイクル全体のデータを一元管理するシステムです。
商品開発の各段階に関わる部門や関係者が、常に最新の情報を共有しながら協働できる環境を提供します。
設計や調達、コンプライアンス文書、バージョン管理、顧客フィードバックに基づく製品改良など、開発プロセス全体を効率化します。これにより、商品の市場投入までの時間を短縮し、コストを抑えながら、顧客ニーズに最適な商品を届けることが可能になります。
PLMは、デザイナーやエンジニア、製造部門、さらには開発プロセスに関わる外部パートナーまで、社内外の情報共有の中核として活用されます。
PIMとPLMの主な違い
PIMとPLMは、どちらも商品情報を扱うシステムですが、PIMは「どう売るか」、PLMは「どう作るか」に焦点を当てています。
この違いを踏まえ、以下では両者の特徴を、主要なカテゴリごとに整理して比較します。
管理範囲
- PIM
PIMは、商品が市場に出た後の情報を一元管理します。流通やマーケティング、販売の最適化を支援します。 - PLM
PLMは、商品の企画、設計、開発、製造、廃棄まで、製品ライフサイクル全体を管理します。エンジニア、デザイナー、R&D部門が連携して、収益性が高く、法規制にも準拠した商品を効率的に開発できるよう支援します。
管理データ
- PIMで管理するデータ
PIMは、顧客に直接見せるデータを管理します。商品名、説明文、写真、仕様などが含まれ、これらの情報を一元管理することで、商品を効果的にマーケティング、販売できます。PIM(商品情報管理)を使えば1つのプラットフォームで情報を更新するだけで、全ての販売チャネルに更新が反映されます。 - PLMで管理するデータ
PLMは、商品開発部門がより良い製品を作るために使用する内部向けのデータを管理します。CAD図面、技術仕様書、設計図、部品表、試作ノート、改訂履歴、コンプライアンス文書などを一元管理し、開発プロセス全体で活用できます。
主な利用部門
- PIM
PIMは、マーケティング、EC、営業、商品企画部門などが活用します。商品のオンライン販売ページの更新やプロモーション資料の作成を支援し、各販売チャネルで正確な商品情報が一貫して表示されるよう管理します。 - PLM
PLMは、エンジニア、デザイナー、商品企画担当、製造部門などが活用します。商品開発に必要な仕様やデータにアクセスしてレビューや承認、更新を行います。商品の構成や調達情報、コストなどを管理します。
役割
PIM
- 「どう売るか」を管理
- 商品流通、マーケティング、販売戦略の最適化
- 各販売チャネルで一貫した商品情報を配信
PLM
- 「どう作るか」を管理
- 商品開発と製造プロセスの効率化と標準化
- 顧客や市場からのフィードバックを反映した商品改良
PIMとPLMは競合するものではなく、商品の「開発」と「販売」をつなぐ補完的なシステムです。
PIMとPLMは併用できるのか
PIMとPLMは、それぞれ目的や役割は異なりますが、組み合わせて活用することで、より一貫した顧客体験を提供することが可能です。
両システムは共にデータの管理、整理、統合を担っており、連携させることで、商品企画からマーケティング、販売促進に至るまで、一貫した正確な情報管理を実現します。「PIMかPLMか」という二者択一ではなく、「PIMとPLMを組み合わせて活用する」という視点で考えられます。
例えば、ファッションブランドがPLMを使って衣料品の設計、調達、製造を行い、その情報をPIMに連携することで、正確で統一された商品情報を市場に配信できます。
このように、PIMとPLMは相互補完的な関係にあり、両者を組み合わせることで、データの信頼性と一貫性を強化し、商品戦略の精度を高め、より良い商品と高い売上を実現といった成果を生み出します。
PIMとPLMを使い分ける3つの判断基準
PIMとPLMは、どちらも企業に欠かせない仕組みですが、活用すべき領域は異なります。どちらを導入するべきか、あるいは両方を組み合わせるべきかは、企業の業務内容、プロセス、目標によって決まります。
以下では、判断の目安となる3つのポイントを紹介します。
1. 企業タイプ別の導入目安
開発中心の企業
- 推奨システム:PLM
- 理由:開発プロセスの管理や商品の品質
- コスト最適化を支援し、収益と成長を確実にするため。
販売中心の企業
- 推奨システム:PIM
- 理由:商品情報を正確に管理し、カタログやEC、小売チャネルなどへの情報発信を効率化できるため。
開発から販売まで一貫して行う企業
- 推奨システム:PIMとPLMの併用
- 理由:開発段階と販売段階の両方で情報を一元管理でき、顧客に一貫したブランド体験を提供できるため。
2. 商品カタログの規模
SKUが数千〜数万点にのぼる企業
- 推奨システム:PIM
- 理由:多様な商品情報を一元管理でき、地域や市場ごとの違いにも柔軟に対応できるため。
商品数が少なく構成がシンプルな企業
- 推奨システム:PLM
- 理由:管理する情報量が少ないため、PIMだと必要以上のコストや運用負荷が発生する可能性があるため。
複雑な多要素商品を開発する企業
- 推奨システム:PLM
- 理由:部品構成や変更履歴を一元的に管理でき、開発効率を高められるため。
3. 現在の課題
開発の遅延や情報の分断に悩んでいる場合
- 推奨システム:PLM
- 理由:開発プロセス全体を可視化し、効率化を支援できるため。
発売後の商品情報の管理や運用に課題がある場合
- 推奨システム:PIM
- 理由:正確で一貫性のある情報を複数販売チャネルに簡単に展開できるため。
サステナブルな商品づくりや法規制対応を強化したい場合
- 推奨システム:PLM
- 理由:調達、設計段階から環境基準や規制を考慮したプロセスを構築できるため。
商品情報や業務フローの全てを一つのプラットフォームでまとめて管理できるのが理想です。
しかし現実には、商品の在庫管理や顧客データなどが、ERP(企業資源計画)やCRM(顧客関係管理)といった別のシステムで作成、保存されている場合もあります。
そのため、PIMやPLMを導入する際は、既存のシステムとスムーズに連携できるかどうかを事前に確認することが重要です。
導入事例
PIM導入事例:世界的家電メーカーElectrolux Group(エレクトロラックスグループ)
Electrolux Group(エレクトロラックスグループ)は、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電から、掃除機やコーヒーメーカーなどの小型家電まで、年間6,000万台以上を世界で販売するグローバルメーカーです。
同社が直面していた課題は、各国・各部門に分散したデータ管理の非効率さでした。既存システムでは、データの重複や更新遅れ、部門間の情報断絶が生じ、最新情報をタイムリーに反映することが困難になっていました。
そこで同社は、最新のPIMシステムを導入。商品仕様、画像、取扱説明書などの情報を一元化し、複数部門が同時にアクセス、編集できる環境を構築しました。
導入結果
- 約80名のチームが同一PIM上で協働しながらも、データ管理に費やす時間を20%削減
- 年間約50万ドルの人件費を削減
同社の課題は「製造プロセス」ではなく「販売後の情報運用」にあったため、PIMの導入が最も効果的なソリューションとなりました。
PIM導入事例:マルチカテゴリー展開の食品ブランド
米国のあるマルチカテゴリー食品ブランドでは、2万点を超える商品ラインナップを抱え、部門ごとに分断された開発プロセスや手作業中心のデータ管理が大きな課題となっていました。
同社が抱えていた根本的な悩みは、単なる情報整理ではなく、
「いかに効率的で収益性の高い商品を、スピーディに市場投入できるか」という点にありました。
この課題を解決するために、同社はPLMを導入。商品企画、設計、調達、製造、販売、廃棄まで、全てのプロセスを単一のプラットフォーム上で統合しました。これにより、R&D、開発、調達、営業など各部門がリアルタイムで同じデータを共有できるようになり、開発から販売まで一貫した情報管理体制を実現しました。
導入結果
- 商品開発のスピードと精度が大幅に向上
- 部門横断での業務効率化を実現
同社の主要課題が「商品開発プロセス」にあったことから、PLMの導入が最も効果的な選択となりました。今後は、販売、マーケティング領域にもPIMを拡張し、開発から販売までをシームレスにつなぐ運用体制の構築が期待されています。
PIMとPLMの融合で実現する次世代の商品管理
小売業界において、PIMとPLMは競合するものではなく、互いを補完し合う存在です。
商品情報の整備やマーケティングに課題を抱える企業には、PIMが最適です。あらゆる販売チャネルで一貫性のある商品情報を発信でき、販売現場の生産性向上と顧客体験の最適化を同時に実現します。
一方、開発、設計、調達、製造といったライフサイクル全体を統合的に管理したい企業には、PLMが効果的です。開発プロセスを可視化し、部門間の協業を効率化することで、品質やコストの最適化を支援します。
しかし、今日の市場はそれだけでは十分ではありません。「情報の断絶」をなくし、ブランド全体で商品情報をリアルタイムに活用できる仕組みが求められています。
そこで生まれたのがCentric PXM™です。Centric PXMは、PIMとPLMをひとつのプラットフォームに統合。商品企画から販売までのあらゆるプロセスをデータでつなぎます。これにより、情報の重複や整合性の課題を解消し、部門間の連携を強化。市場投入までのリードタイムを短縮し、変化の激しい市場に素早く適応しながら、顧客に最適な商品体験を提供することが可能になります。